「うつ」って、はずかしこと？
我が国において精神的な病気に対しての理解がかなり進み、最近では「うつ」になるということが特別な事とはとらえられなくなっています。読者の皆さんにとっても、気分がさえなくなると「うつ病」という病気を心配するのは日常的にあり得ることでしょう。実際私の毎日の診療においても、サラリーマンの方はもとより、公務員、教師、銀行員などのいわゆるお固いお仕事をされている方や、学生さん、主婦の方などごく普通の一般の方まで、色んな方がお見えになっています。そう言う意味では今や精神科に通うということは決して特別なことではなく、日常生活で起こり得ることだという認識が一般的になっているようです。

「うつ」ってどんな病気？
さてその「うつ」ですが、どんな状態になると「うつ」と言うのでしょう。もちろん皆さんが想像されるように「何となく気分がさえない」「気分が沈む」「やる気が出ない」といった症状が頻繁に起こったり、長く続いたりすると「うつ」という話しになってきます。これには原因となる悩みがあるときもあれば、ない時もあるようです。その他に「必要以上にイライラしたり」「集中力が低下したり」「いつまでもクヨクヨ悩んだり」「意欲がなくなったり」することも症状としてよくあります。

しかしそれだけでありません！
このように「うつ」と聞くとつい心の問題と思いがちかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。「うつ」になると「眠られない」「体がダルい」「食欲がない」など身体的症状が併発することがほとんどです。その他に注目すべきは「体の痛み」があります。慢性的な「肩こり」「腰痛」「頭痛」などが「うつ」が原因で起こることは意外に多く、内科、整形外科でなかなか治らなかった痛みが「うつ」の治療をすることで改善されることはよくある話しです。痛みは人聞が感じる感覚の中でとても嫌なものの一つでしょう。痛みだけに注目して治療をしてみたけれどあまり改善しないというときは、視点を変えて精神科を訪ねてみるのも良いかもしれません。

何が起こっているの？
このように「うつ」は精神的、肉体的に様々な症状を引き起こす訳ですが、これらの原因は脳の中の神経と神経のすき間における情報伝達物質のバランスの崩れということが研究の結果分かってきています。ということはこの情報伝達物質のバランスの崩れを治すことができれば、これらの症状も改善出来るようになるという訳です。

気の持ちようではありません。
「頑張ればどうにかなる」「気にしない」などと無理をすると更に悪くなるのが「うつ」の特徴でもあります。無理することなく、治療をすることで脳内における情報伝達物質のバランスを整え、気分を改善することは単純なようですが、とても良いことだと思います。ためらうことなく治療を開始しましょう。